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天安門事件から31年 “新しい中華連邦”構想が始動

1989年6月4日。中国勢における騒乱「天安門事件」に世界中の注目が集まったあの日から今日で31年となった。習近平指導部は犠牲者の追悼や抗議活動を抑え込み、事件の再評価を拒否する姿勢を打ち出している。現場となった北京の天安門広場付近や新型コロナウイルス感染拡大への対応を巡り不満がくすぶっている湖北省武漢市でも当局が厳戒警備を敷いた旨“喧伝”されている。そうした中で、中国勢において重要な動きがあったのである。

“新しい中華連邦(NewFederalChina)を祝う“式典が今日午前8時半過ぎから全世界に向けて公開されている動画チャンネルの題名である。文字通り、中華連邦構想について有識者らが意見を表明する「開かれた存在」である動画であった。

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(武昌起義の際に湖北軍政府が使用した鉄血十八星旗)(出典:Wikipedia

 

中国勢には古来「大一統」という観念がある。ここで「大」とは「重視、尊重する」という意味の動詞であって「一統」とは「天下の諸侯を天子が統一すること」の意であるとされている。中国勢においてはこの大一統イデオロギーが支配的であり「地方分権」の観念や「連邦制」論は存在しなかったのであった。中国共産党の第二回大会(1922年7月)で採択された「中国共産党第二回大会宣言」には「連邦」構想が提起されていた。以下がその骨子である。

  • 第一、中国各省(少数民族地区を除いた各省を指す)では連邦制をとらない。
  • 第二、蒙古、西蔵、新疆は自治邦を促進し、中華連邦共和国をつくる。

そして、第二回党大会のスローガンは以下のようなものであった。

  • 第一、中国各省(東三省を含む)を統一し、真の民主共和国とする。
  • 第二、蒙古、西蔵、回疆の三地区で自治を実行し、民主自治邦とする。
  • 第三、自由連邦制を用いて中国各省、蒙古、西蔵、回疆を統一し、中華連邦共和国を樹立する

こうした点から見ても創立初期の中国共産党の考え方は「連邦案」であったことがわかるのであり、他方で今次連邦構想の動きは弊研究所が兼ねてより注目してきた今までの流れと明らかに違うのである。なぜならそれは、弊研究所代表・原田武夫が予測分析シナリオで提言する米欧勢が中国勢と我が国からあらゆるものを簒奪しようとする「富の東漸」と連関してくるからである。そして中国勢を真の意味で動かす「根源的」階層が中心となって構成されるのが“新しい中華連邦構想”に他ならないからである。当研究所では、引き続き今次構想の行方を注視して参りたい。

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー

羽富 宏文 記す

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