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Live and play

最近また出不精を発揮していたので、折角クリスマス前の美しい季節、ポケモンGO片手に無理やり散歩に出ています。とはいいつついかんせん寒いわ指がかじかむわで、これは冬になるにつれかなりアクティブユーザー数が落ち込んでいるのではないかと余計な想像をしてしまいます。

昔からゲームの類は苦手でプレイ歴もほとんどない私ですが、最近のブラウザゲームやスマホゲームは基本プレイが無料のものも多く、ソーシャル性も高いため、ここ数年は友人の勧めや話題づくりのために時々様々なゲームを試してみることにしています。

私はゲーム以上に映画を観るのが苦手でほとんどタイトルを知りませんし、音楽もあまり聞きません。これは特に外国で初対面の人と世間話をしようとすると結構致命的な共通の話題の欠如です。特にこちらに来てから、ハリウッドは勿論、時にフィンランド人とイタリア人がやれフランス映画だドイツ映画だと話を始めたりするので全くのお手上げです。(そもそも立食パーティースタイルでのコミュニケーション術の難易度に萎縮しているのですが…)

ゲームの話題はこの2つほど一般的ではないかもしれませんが、特にITの仕事関係ですと相手はいわゆるGeekであることが多いので、アプリストアの人気トップゲームなどは十分普遍的な話題になったりします。その他にもGPSやVR、AIなどは特にわかりやすいですが、様々な技術系(時には社会や教育)のニュースの切り口としてもゲームは意外に有用です。

 

加えて最近改めて感じるのは、ゲームの考え方って結構重要だなということです。

いわゆるゲーミフィケーションという分野ですが、あらゆる物事を遂行する場面において、適切なプレーヤー、操作、UI、環境、配分、戦術、そして報酬を設定構築する能力は非常に使えると思うのです。専門的なことは私も全くの不勉強ですが、少なくとも自分にひきつけた範囲の話であれば十分思考のとっかかりになります。

 

どういったゲームなら『私は』面白いと感じるのか、どういったシステムなら飽きずに続けられるのか。3分もしないうちに投げ出したくなるゲームはいったい何が悪いのか。似たようなシステムなのに時につまらないと感じる要因は何か。

 

つまらないというのは、つまり不満、それも大抵は「報酬」に対する不満があるということです。

時に過去のステージに戻って延々と経験値を溜める作業に従事する必要がある場合があります。言ってみれば同じことの繰り返し。得られるのは時にボーナスはあるものの決まった経験値やアイテム。徐々にしかたまらないゲージ。

仮に一定のレベルを超えれば次の強い敵が倒せ、物語は進み、ランクアップができるとわかっていても、見事にその後3プレイほどで私は飽きます。その報酬では私はゲームを続けられないのです。

 

それをゲーマーな友人に述べたことろ、

「コツコツができないタイプなんだ。安定した生活に不満を感じるサラリーマンか」

というお言葉を頂戴しました。

 

私は夏休みの宿題が終わらなかったことはありませんし、何より大学入試の時には綿密に立てた点数計算とそのための学習計画を独学で一年間遂行しきった自負があります。私は物事をコツコツ計画通りにやれる真面目な人間だと信じていました。たかがゲームだから駄目なのです。

 

と、反論したところで、マスター友人の分析。

「デイリー(毎日のルーティーン作業)は消費できないのに、達成が必要なタスクはもう全部終わらせてるんだ。(一日3つほどに分割しすぐ終わらせた)」

「要するに夏休みの宿題みたいなことは限りなく速く終わらせたかっただけで、毎日与えられた何かをコツコツすること自体は苦痛なんじゃないの?」

 

目から鱗、確かに私の強烈なモチベーションになっていたのは宿題のない自由な8月、受験の後の自由気ままであろう大学生活です。私は嫌なことを片付けその先の開放感を得るための労力を惜しまないだけで、決して与えられた作業をコツコツこなすことが得意であったわけではないのです。実際その友人はデイリーのように毎日一定のタスクさえをこなせば自動的に報われるシステムが大好きだそうで、なるほど社会人になってなお育成ゲームを複数同時にプレイしてレベルマックスまで育て上げ、更に他のゲームにまで手を出せるのはそのためなのです。絶対的に自由度が増えた大学生活では一転、テスト前や卒論前にあれほど死にそうな目にはあっていたのは、私のこの無意識の報酬形態がそれまでに比べてうまく働かなくなっていたのも原因でしょう。

 

これがわかってから、私は自分がやらなければいけない作業を「成長のため」だとかいういい感じの言葉ではなく、素直に「嫌なこと」として分類し、それを達成することによって得られる自由時間や報酬を明確にセットすることで、なるべく早く終わらせる(ひいては締切にきちんと間に合う)インセンティブが働くようにしています。もちろんゲームと違って上手く行くときばかりではありませんが、カラクリがわかればいつスイッチが押せるかわからないやる気をただ待つより、自分をコントロールできているように思います。HPや成功率なども鑑みて、安定した成果が保てるようできる限り毎日の作業と報酬をうまく調整するよう心がけています。

 

HabiticaというRPG風タスク管理システムがあります。自分で設定したタスクに対して報酬が得られ、それに応じてペットを育てたりモンスターを倒したりできます。企画書を提出するからゴミを出すといったものまで千差万別、なんでも報いてくれます。時にあまりにくだらないタスクを登録して一種の罪悪感を覚えることもありますが、コインが溜まっていくことの快感に変えて今日もタスクを片付け(多分)成長していける、中々よいシステムだと思っています。ただコイン等を悪戯に溜め込んでここぞというときに使えないのは私の悪い癖でもあるので、これは今後要改善です。

https://habitica.com/

 

また、こんなことを考えていた矢先、下記の本に出会いました。今回の記事を書く際に頭の中を整理するのに非常に参考になったのでご紹介させていただきます。文化から技術まで幅広い観点からゲームやその周辺について書かれており読み物としても非常に興味深いものでした。

 

徳岡 正肇(2015)『ゲームの今 ゲーム業界を見通す18のキーワード』 SBクリエイティブ

 

AIがもてはやされている昨今ですが、人間への反逆より先にAIを最大限有効活用するシステムや制度をいかにうまく構築できるか、が今後真摯に問われていくことだと思います。そんなときにも、こうやって複雑怪奇な現実世界を一種ゲーム化して考える視点は使えるのではないでしょうか。多くの学問で事象をモデル化するプロセスと、根本的には似通っているとも感じます。

 

私は私の人生ゲームの中でレベルもまだまだ低く経験値も体力も足りません。巨大な敵を倒すRPGなのか、のんびりした育成ゲームなのか、頭をつかうパズルゲームと見せかけて実は素手で殴り合うファイティング系なのか、もしかしたら収集ゲームなのか脱出ゲームかもわかりませんが、仲間たちと最高の満足度を得られるようなものに育でていきたいと思います。

 

 

【プロフィール】

楼 まりあ

 

神戸・東京・マニラのオフショア開発を繋ぐブリッジSEとして、そして東欧での新拠点をリサーチするため現在エストニア現地企業で外部契約社員としてタリンで在宅勤務。大学時代、マニラオフィスのオープンスタッフとして1年間マニラに滞在。NYでインターン経験有。

東京大学経済学部卒。

 

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