An exterior view of the HSBC headquarters at the financial Central district in Hong Kong
 
 
2018年01月12日 #

【特別連載】中国勢の実態を探る(下)―金融拠点は“何処”に…?―

※【特別連載】中国勢の実態を探る(上)はこちら

我が国が中国勢に改めて進出しようとしている。前半では、これに関連するマクロな動きを確認してきた。では、その中国勢の動向をより詳しく見て行こう。中国勢の金融を巡る動向を考えるに当たっては、同国勢の金融拠点を見ていくのが妥当である。

 

直近で中国勢の推進する緩和策に則った動きを見せたのが、弊研究所でも度々言及してきた上海勢である。去る元日、中国勢は「上海」を「香港スタイルの自由貿易区(Hong Kong-style free marketplace)」とすべく規制緩和を行う旨、公表した[1]

そもそも読者には旧聞に属すものであると推察するが、中国勢の金融拠点を議論するには、英国勢、とくにロンドン・シティ(City of London)に注目しなければならない。ロンドン・シティは中国勢(上海勢)に対して人民元の国際化の面で協力してきた。例えば、ロンドン市長 (Lord Mayor of the City of London)は昨年(2017年)、香港、北京、上海などを訪れ、人民元の国際化・FinTech、グリーン・ファイナンスの推進につき議論をしたのである[2]。その結果、上海とロンドン・シティの証券マーケットの接続スキームが“第2段階”へ進んだのだという[3]

 

写真1 昨年(2017年)2月、上海勢らを訪問したパームリー・ロンドン・シティ市長

01_CityOfLondon

(出典:Reuters[4]

 

その後、昨年末には両者はフィージビリティ・スタディを終え、“上海=ロンドン”関係はより緊密になっている旨、“喧伝”されているの[5]

 

こうして上海=ロンドン関係が、やや取り残されている感があるのが、金融センターとして格段の地位を誇る、香港勢である。

上述したように、パームリー・ロンドン・シティ市長は香港勢にも訪問している。その際には以下の議論をしたのだという[6]

  • オフショア人民元マーケット
  • サイバー犯罪
  • カーボン・ディスクロージャー
  • グリーン・ファイナンス
  • FinTech

 

こう見ると、英国勢は香港勢も重要視しているように見える。しかし、香港勢を巡っては、「民主化デモ」を忘れてはならないのである。

 

写真2 今年(2018年)元日に香港で生じた民主化デモ

02_Demo

(出典:共同通信[7]

 

今年の元日にも民主化デモが生じている。こうしたデモは英国勢の統治下でも何度か生じているが、今日のデモにおいては英国勢の作為が想起されるのである。香港勢の歴史を振り返れば、英国勢の統治下で最後の総督を務めたパッテン卿が、返還前に急速な民主化を同国勢で推し進めたことがある[8]。言うなれば、返還前に“爆弾”を仕込んでいった、と推理できるのである。

こうした英国勢の作為の更なる傍証になり得るのが、香港上海銀行(HSBC)の動向である。同銀行で一昨年(2016年)、香港勢への本社移転が議論に上がった。同銀行の香港勢での売上は英国勢での売上と比較してほぼタイまたは少し多くなっており、香港勢は同銀行最大の収益源である。無論、同銀行は歴史的にとっても重要な拠点である。それにも拘らず、結局香港勢への本店移転をせず、結局英国勢に留まった[9]。もし香港勢が新たな金融拠点になるのであれば、BREXITで揺れ動く中、同銀行は香港勢に移ったはずである。

以上、中国勢の金融拠点を巡る直近の動向を公開情報ベースで確認してきた。そこで明らかになったのが、英国勢の動きを背景とした上海勢の更なる勃興と香港勢の動揺が着実に進行している姿であった。

 

勿論、そうした英国勢の動きを受けて、その他米欧勢が香港勢に接近する、といったことも想定はできる。他方で、こうした劣勢を覆すべく、香港勢が必死の努力をしているであろう。そうなれば、香港勢が何処を誘導すべく動いているのか?も重要な点であろう。

 

そんな香港勢、米欧勢、我が国 、中国勢の本音を探るべく、筆者は来る15日(月)から16日(火)まで開催される「アジア金融フォーラム(Asian Financial Forum)」に参加する

 

写真3 「アジア金融フォーラム2017」の様子

03_AFF

(出典:Asian Financial Forum)

 

同会場の様子、参加結果はYouTubeや本ブログを通じて随時報告したいと考えている。引き続き、香港勢を巡る諸国勢の動向に注意を向けていきたい。

 

2018年1月12日(金)

リサーチャー 大和田 克 記

 

 

※原田武夫国際戦略情報研究所のYouTube公式チャンネルはこちらから登録できます。

[1] http://www.scmp.com/business/global-economy/article/2126138/go-flow-china-develop-shanghais-free-trade-zone-and-port参照

[2] http://news.cityoflondon.gov.uk/lord-mayor-leads-city-delegation-to-hong-kong-beijing-shanghai-and-tianjin/参照

[3] https://uk.reuters.com/article/uk-hongkong-london-stockconnect/shanghai-london-connect-talks-moving-to-second-phase-london-official-idUKKBN15W0HD参照

[4] 同上

[5] http://www.scmp.com/business/global-economy/article/2124684/shanghai-and-london-stock-exchanges-take-step-closer-setting参照

[6] https://www.gov.uk/government/news/the-lord-mayor-of-the-city-of-london-visits-hong-kong参照

[7] https://this.kiji.is/320501884392014945参照

[8] 同卿は中国勢からの独立に対しては反対している。

http://www.afpbb.com/articles/-/3109221参照

[9] https://www.reuters.com/article/us-hsbc-headquarters/hsbc-keeps-headquarters-in-london-rejects-move-to-hong-kong-idUSKCN0VN11P参照

  • 無料会員登録をするとお得な特典があります マイページログイン IISIA公式メールマガジン
  • あなたへのおすすめはこちら