「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第35回 責任能力 - IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 - haradatakeo.com
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「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第35回 責任能力

 

先日、気球に乗ってきました♪まずは高度300メートル位まで上って暫く揺蕩い、続いて高度1千メートル、そして高度2千メートルまで上り、その後はすこしずつ高度を下げてゆるゆると風に流される風任せの旅。飛行機の窓から見るような景色が直に360度見渡せる開放感。見渡す限り畑と森ばかりですが、貴重な体験ができました。このブログページの写真は、自分の乗っている気球の影を写したもの。メルヘンな感じでお気に入りです!

さて細々と上記のお題で書きたいことを書き連ねてきて、時に個人的な愚痴のようになってきている感も無きにしも非ず…ですが、今回は「責任能力」について書いてみたいと思います。

グローバル人財に何が一番大切かと問われたならば「責任能力」と「コミュニケーション能力」と私なら真っ先に回答します。この二つが無ければ、「グローバル」という飾りがつこうがつくまいが「人財」ではないですよね、ハイ。

言うまでもなく、ここでいう責任能力とは法律上の責任能力ではなく、「失敗や損失に対し、きちんと責任を果たす能力」という意味での責任能力です。自分の仕事に責任を持つのは当然のことだと思うのですが、どうにも適当でやっつけ仕事しかしない人が日本人でも増えてきていると感じるのは気のせいなのか、歳のせいなのか…(笑)

私もフランス生活が長くなり相当アバウトになってきている方なのですが、そんな私でさえ感じるのですから、気のせいではないのでしょう。3時間の会議の議事録が3行で「議事録です」と送付されてきたときには、なんだかもうどうしていいかわからなくなりました。しかも、要点がずれている3行(笑)。自分の直部下だったら指導するでしょうが、そうでないのに口を出すのもなんですし、私、赤ペン先生じゃないのだけれど、と思いつつ手を入れてあげましたが…。しかも、それが清書され関係者全員に送付されたのが1ヵ月後というおまけつき。これは極端な事例ですが…どう対処すべきなのか迷います。私自身は他人の子でも平気で叱るヒトなので、あまりにひどいときは直接言ってしまうのですけれど、中・高時代の同級生と話をしていると、どこの職場でも「あるある」のようです。そして、「息子か娘だと思って、お母さんのようにやさしく接してあげて」とこちらが諭されるという…。こんな大きな子供がいる歳でもなければ、こんな出来の悪い子供を持ってもいないわ、というより自分の子どもだったら3回同じ間違い繰り返したら張り飛ばすわ!、と録音されていたら困るので(笑)叫ぶわけにもいかず、ミニ同窓会で愚痴る同世代の働く女性陣(笑)。「研修医」ですらこういうタイプがいて医療現場も大変らしく、「ゆとり世代はあまり強く言うと辞めちゃうから」と、腫物に触るようにしていたら本人のためにもならないのでしょうにと思いつつ、これも時代の流れと諦めるべきなのか…。

日本ではこういうタイプの人はまだまだ少数派ですが、海外では残念ながら担当レベルは寧ろこの様なタイプが主流です。マネージャークラスでも多いです。「責任能力」がないわけではなく(「ない」場合も往々にしてあり)、「責任範囲」が非常に狭いのです。ですから対応が大変!特に企業規模が大きくなればなるほど担当が細分化されている上、国外に外注されている仕事も多く、誰に聞いても「これは私の担当じゃない」と、顧客先内で仕事を投げ合う様子がチェーンメールで垣間見えるようなこともあります。「自分の担当」以外の仕事を誰が担当しているかということも分ってない場合が多々あるのです。そのため、カウンターパートである窓口が担当レベルであると、一つ回答を得るのに日本の同業者であれば3日で可能であるところ、数か月掛かるのは当たり前ということになってしまいます。しかし本社側にそんな海外事情は通じません。本社が待ち望んでいる回答をいつまでたっても顧客から得られなければ、それは海外拠点の人材レベルが低いからとのレッテルを張られてしまいます。大抵の場合、日本人であれば「回答を得られる」までが仕事であれば、客先に嫌がれるぐらいしつこく(笑)フォローするのを仕事と捉えます。しかし、ローカルや客先の窓口は「回答を出してくれる人に繋ぐ」のが仕事であって、「回答を出す」のが自分自身でなければ、「つなぎ」をした時点で自分の仕事は終わっており、「つなぎ」役として鬼のようなフォローをするのは仕事ではないのです。「回答が来ない」場合に、週1や2週間に1回ぐらいの割合でフォローすることはあっても、「回答を出す」役割の人が仕事をしていないのだから、「回答が来ない」のは自分の責任ではないと考えていることが多いのです。

海外拠点ではこうした小さな食い違いが多大な時間のロスを生みがちです。ローカルやカウンターパートが自分の「責任範囲」をどう考えているのかを見極め、その上で「責任能力」を果たすように促さないと、プロジェクトが進行していかないことを予め念頭に入れた上で円滑に業務を遂行してください。

プロフィール

川村 朋子

元外交官。大臣官房儀典官室、在フランス大使館、在ガボン大使館にて勤務。
現在は在仏日系企業に勤務。留学、外務省時代、現在と在仏歴通算15年以上。

リヨン第二大学歴史学修士、リヨン政治学院DEA(博士予備課程に相当)取得
主な論文に「アンシャンレジーム期のリヨンの倒産・破産状況」「日本の軍事問題の現状」がある。

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