「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第19回 求心力 - IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 - haradatakeo.com
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「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第19回 求心力

またしてもフランスで痛ましいテロ事件が起きました。7月14日の革命記念日というフランスを象徴する日に起きたこのテロ事件。革命記念日にはどこの市町村でも大規模な花火大会が行われ、学校は夏休みに入っているけれども、まだバカンスに出かけていないフランスの人々にとって夏の最初の一大イベントともいえるものであり、そこがテロのターゲットになったショックというのは我々日本人には計り知れないものです。バカンスのために働くとさえ言われるフランス人にとって、休暇の時期に親子で楽しめるはずのイベントがテロの標的になってしまっては、人生のすべての楽しみを否定されたに等しく、これまで起きたテロの時以上に、不満や不安がテロ事件そのものやその犯人ばかりでなくテロ対策を行っている政府にまで向けられている気がします。そして隣国ドイツでも1週間で4件も立て続けに起きたテロ事件。テロ対策で重要な根幹となるのは「情報収集」と「テロに対する国民の意識強化」であるとされていますが、「情報収集」は各国諜報機関とも連携し強化を図っているものの、直接的にイスラム国とは関係のない「イスラム原理主義」に感化された個人プレイヤーのテロリストによるテロに対処するには限界があり、また「国民の意識強化」は一朝一夕に為し得るものではなく、今後もテロ・リスクと背中合わせで生活していかなければならないのがフランスばかりでなく欧米やアジア各国の現実です。駐在で海外にお住いの方々や出張で海外に行く方々にはこれまで以上に「危機管理」をしっかり行っていただきたく思います。自分の身は自分でしか守れないのです。

さて前置きが長くなりましたが、今回は日本への一時帰国中にグローバル人財として活躍している様々な方々とお会いした中で、彼・彼女らに共通する魅力こそがグローバル人財に限らず人の上に立つ者として又チームを組んで仕事をしていく中で一番重要なのではないかと実感したことから、改めてこの魅力、「求心力」について書かせていただこうと思います。

「求心力」とは人々の心を惹きつける能力であり、その人を中心に物事を進めていこうと周りの者に思わせる能力ですから、そういう人間が上司としてプロジェクトをまとめていれば、自ずと周りの人間はモチベーションを持って、円滑なチームワークで仕事を進めることができるのは想像に難くないと思います。

「求心力」と一言でいうのは容易いですが、実際に人を惹きつける力とは何なのでしょうか?各人に備わる人間的魅力とは何か、との問いはもはや哲学の領域になってしまいますのでそう簡単に答えが出ないものなのですが、やはりこうした魅力のある方々は無意識に自分をいつも高めていける人たちであるのだと思います。流行の「自分磨き」などという安っぽい誘い文句に釣られてカルチャースクールに通って自己満足に浸るのではなく、日々様々な方面で自己研鑽を積んでいるからこそ、一過的な魅力では終わらない魅力を自然と身につけているのでしょう。生まれつき魅力がある人なんていません。どんなに目鼻立ちが整い、一見目を引くような姿・顔貌としても、それだけで人間的魅力がある事にはならないですし、人が集まり従っていくものではなく、やはり魅力的な人間になるためには意識的であれ無意識であれそれなりの努力をしているからこそ、人間的な魅力が培われていくのだと思います。

自己研鑽という言葉を使いましたが、この自己研鑽が内向きなもの、自分自身にしか関係しないものに限られていては、人間的な魅力も生まれえないか、或いは一過性のもので終わってしまいます。どんな仕事でも他人と関わらずに独りで行える仕事はないわけですから、仕事ができ更に他人との関わり方が上手な方でなければ、本当に仕事が出来るとは言えないでしょう。こういう方々はやはり他人をよく観察しているからこそ相手にあった配慮が行え、どんなに仕事上で部下に対し厳しくしても、自らに厳しいからこそ部下もその厳しさを受け入れられるし、仕事以外でしっかりフォローを入れて信頼関係を築くことに余念がないからこそ、チームを上手く纏め上げる力がダントツに高く、個人の仕事能力ばかりでなくチームとしての能力も引き上げることができる方々です。このような力を持つ方々が人間的な魅力を放ち求心力を持っているのであり、周りには人が集まり、集まった人々に良い影響を与えてくれ、そこからまた求心力のある人間が育つという相乗効果をも生み出してくれるのです。

海外駐在を経験した方の中には、もともと求心力がありそれをさらに磨いている方々やその素質が海外時代に開花している方々も多く見受けられます。他人とのコミュニケーションが日本にいる時以上に重要であるからこそ、他人観察能力や他人との接し方を学ぶ機会が多くなるからではないでしょうか。もちろん海外に出なくてもこうした魅力を持っている人間は大勢いますが、海外に出る機会があるのであれば、是非求心力のある人財となる機会として最大限活用していただきたいものです。

 

プロフィール

川村 朋子

元外交官。大臣官房儀典官室、在フランス大使館、在ガボン大使館にて勤務。     現在は在仏日系企業に勤務。留学、外務省時代、現在と在仏歴通算15年以上。

リヨン第二大学歴史学修士、リヨン政治学院DEA(博士予備課程に相当)取得       主な論文に「アンシャンレジーム期のリヨンの倒産・破産状況」「日本の軍事問題の現状」がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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